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【人事・労務・労働問題】業務上の疾病(労災)による休業中の労働者への賃金につき、給付済みの休業補償給付等の金額の控除が認められなかった事例・東京高裁平成23年2月23日判決・労判1022号5頁

【事案の概要】
 株式会社Y(株式会社東芝)の従業員であるXが、Yがした平成16年9月9日付解雇は、業務上の疾病であるうつ病のために休業していた期間中になされたものであり、労働基準法19条1項に違反して無効であるとして、雇用契約上の地位確認と、未払賃金、安全配慮義務違反による債務不履行または不法行為に基づく損害賠償金の支払い等を求めた事案です。

 Xのうつ病については、当初は労災認定されておらず、Y社は業務外の私傷病による休業と扱って、休業期間満了による解雇を行なったようですが、後日になって、Yのうつ病につき労災認定がされたという事情があります。
 また、Y社は、Xが休業を始めた以降の賃金を支払っていないため、Xは、解雇後の賃金請求に加えて、休業期間中の未払賃金も請求しています。一方で、Xは、休業期間中に、健保組合から傷病手当金等を、労災認定後は労働基準監督署から休業補償給付等を受領しています。

【争点】
 解雇の有効性(労基法19条1項に違反するか=Xのうつ病が業務上のものか、業務外のものか)、安全配慮義務の有無等ももちろん争点となりましたが、裁判所は、Xのうつ病が業務上の疾病であり解雇が無効である、また、Yに安全配慮義務違反による責任があると判断しています。

 今回紹介するのは、休業期間中の賃金額から、Xが受領した傷病手当金及び休業補償給付額を控除することができるか、という点です。

【裁判所の判断】
 裁判所は、傷病手当金、休業補償給付は賃金を補てんするものではないから、これらの給付を受領しているからといって賃金額が減少することにはならないとして、賃金満額の支払いをYに命じました。

 なお、Xがすでに受け取った休業補償給付は、労基署との関係で不当利得になる(労基署に返還することになる)としていますので、Xは、休業期間中について、賃金と休業補償給付をダブルでもらうことはできないことになっています。

【コメント】
 (1)本件のY社は、就業規則に定める業務“外”の傷病による休職期間満了日付で解雇しています。労働者の休業が業務“外”の傷病によるときは、就業期間に定めた休職期間が満了すれば、自然退職等をさせることは比較的容易ですが、労働者の休業が業務“上”の傷病によるときは、就業期間に定めた休職期間が満了したとしても、解雇(及び自然退職させること)はできません(労働基準法19条1項)。本件は、Y社がXに対して休職期間満了による解雇を行なった時点では、Xのうつ病につき労災認定がされておらず、Y社は労基法19条1項の解雇制限を受けないと判断して解雇をしたと思われます。

 結果論ですが、Y社としては、Xを直ちに解雇せずに、労働基準法81条の打切補償を行なってから解雇を行なったほうが、解雇が有効と認められる可能性が高く、負担も軽く済んだかもしれません。(東京高裁平成22年9月16日判決参照)。

 うつ病等で長期間休業している労働者については、うつ病が業務上のものか業務外のものかによって結論が大きく異なってきます。会社側の対応は慎重にしましょう!

 (2)ちなみに、解雇が無効な場合、解雇時に遡ってそれ以降の賃金を支払うことになりますが(いわゆるバックペイというものです。)、本件は解雇後6年以上経過しているため、解雇後の賃金総額だけでも2000万円を超えています。本件のY社は超大手企業ですので、それに耐えうるかもしれませんが、通常の会社であれば支払いは困難と言わざるを得ない金額ですよね。

 今回の判決に関しては、(使用者側・企業側関係者に対して、)上記以外にもお伝えしておきたい点もありますが、ブログではこの程度にとどめておきます。

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弁護士田辺敏晃

Author:弁護士田辺敏晃
東京の四ッ谷駅近くで執務する弁護士です。
経営者側に立った労働問題の解決に力を入れています。
法律の話題を中心に、書籍紹介、趣味の話などもまぜて書いています。

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