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【人事・労務・労働問題】トラブル社員への対応その1 経費を不正請求・取得する従業員 大阪地判平成22年5月14日・労判1015号70頁(Y学園事件)を題材に

 今回は、経費の不正請求をしたトラブル社員への懲戒解雇処分が無効とされた事例を紹介します。

【事案の概要・判決】
 被告学校法人Yが経営する私立高校の教諭だった原告X(実際の事件では原告が二人ですが、もう一人は省略します)は、Yから、Xが顧問をしていた書道部の合宿の経費につきPTAから金員を詐取したとして懲戒解雇処分を受けたため、Yに対して、労働契約上の権利を有する地位の確認請求と、未払い賃金・未払い賞与の支払いを請求しました。

 書道部では、毎年合宿を行ない、宿泊施設内の大広間を借りて作品を制作していましたが、宿泊費の他に大広間利用料は特に発生していませんでした。平成9年の合宿費用が予算の範囲を超えたため、Xらは対応を検討し、合宿で有料の施設を利用した場合、PTAに対して施設費を申請すると補助金が支給される制度があるため、宿泊施設に対して、宿泊費の領収書に代えて実際には支払っていない広間使用代の領収書の発行を依頼し、広間使用代の領収書を添付してPTAに対して施設費の申請をし、申請額を受領しました。

 また、生徒会予算や部員からの部費だけでは書道部の部活動全体を賄うことができなかったため、Xはその不足分を事実上自己負担していました。このような状況もあり、平成10年以降同19年まで、同様の方法でPTAから施設費の支給を受け(毎年3万~8万円)、部活動の費用に充てていました。

 判決は、Xらの行為は詐欺的な行為であり、懲戒処分に値する不適切な行為であると言わざるを得ないとしながらも、XがPTAから支給された施設費を個人的に利得したという証拠はなくむしろ書道部の活動資金に使用されたと推認できることや、Yでは、部活動費用の会計処理をチェックする体制になく、部活動費が不足しているかの調査を行なった証拠もないことなどの事情を勘案し、Xに対して、懲戒処分において最も重い懲戒解雇処分をすることは社会通念上相当であるといえず、懲戒解雇処分は無効であるとし、Xの請求を全て認めました。

【コメント】
 一般に、従業員が売上金を着服したり、経費を不正に請求・取得した等の金銭に関する不正行為については、懲戒解雇が有効と判断される傾向にあります。この傾向からすると、今回の事案もXに対する懲戒解雇が有効になってもおかしくないともいえます。

 しかし、このブログで先日紹介した東京地裁平成22年7月23日決定・労判1013号25頁の事例も、従業員が会社から経費を詐取した事案でしたが、金額が小さいこと等も考慮し、懲戒解雇処分が無効とされています。

 いずれの事案も、従業員がひそかに私腹を肥やしたというような事情がないのが特徴です。むしろ、担当する業務をスムーズに遂行しようという一応もっともな目的があり、ただ、その目的達成手段としてちょっと間違った行動をとってしまったケースという評価ができそうです。

 会社としては、経費を詐取した従業員に対して、問答無用に懲戒解雇をするのではなく、不正行為の悪質性の程度を見極めて、懲戒処分の内容を判断していく必要があります。
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弁護士田辺敏晃

Author:弁護士田辺敏晃
東京の四ッ谷駅近くで執務する弁護士です。
経営者側に立った労働問題の解決に力を入れています。
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